バット女

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私が高校二年生だった頃の話だ。 当時、私が通っていた高校では、ある怖い噂が蔓延していた。それは、バット女と呼ばれる怪人物の噂だった。 バット女。噂で聞いた限りでは、それは恐ろしい女だった。バット女から襲われた経験がある真由美の談によると、バット女は推定年齢が二十代半ばから三十才ぐらい。派手な化粧に金髪。ホットパンツに見せブラを着用。衣服はそれだけ。そんな公然猥褻罪で捕まりそうな紙一重の服装に、兵隊が履くようなコンバットブーツをコーディネート。 真由美の談を元に、私は脳内フル稼働で想像してみた。なるほど。変わった人がたくさんいるアメリカ辺りなら、そういう姿格好の人物がいたとしても、まあ納得が出来なくもないかな。でも、日本国内的な感覚では、まともな社会人の外出着とは言えまい。 「真由美。バット女って、その格好で外を歩いてるの?」 私達の問いに、真由美は身震いしながら答えた。まるで思い出したくない過去を振り払うかのように、固く目を閉ざしている。 「超薄着でお腹をモロ出しした金髪三十路女が、雄叫びを上げながらバット振り回して追いかけて来たんだよ。あの怖さ、体験してみないと分かんないと思う」 「警察には言ったの?」 「交番に行ったよ。でも、まともに取り合ってくれなかった。巡査の話だと、何度も交番にバット女の苦情が来てるんだって。苦情の度に付近を捜索したんだけど、怪しい人物は居なかったって。あいつらまともに探す気も無いし、逮捕する気も無いよ。だから警察は頼りにならない。バット女を単なる噂として都市伝説扱いしてるんだもん。話にならない」 「怖いよね」 真由美ではない他の同級生から聞いた話によると、バット女は、中学生未満の子供や中高年女性、それと男子には絶対に危害を加えようとしないのだと言う。 「なんか、不公平っぽくない?」 「なんか、バット女むかつくねえ」 バット女に遭遇しない事をひたすら祈る。私達には、それしか対処法は無かった。
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