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《2》
「おはよう」
「おはよ」「うっす」
汗が止まらないまま教室に駆け込むと、佳乃と鹿嶋くんはもう席に座っていた。
「意外とギリじゃない?今日早く来るって言ってなかったっけ?」
佳乃の机には、今から始まる現代文のテスト範囲のプリントが広げられていた。
「うー。ヤバい。勉強するつもりだったのに。由衣め……」
「あはは。遅刻の原因は由衣ちゃん?」
「そう。ここまで乗っけてきた」
私が、特別進学校でも落ちこぼれでもない、普通科の普通代表のこの高校に進学を決めた理由はただ1つ。自宅から1番近かったから。今日その利点は最大限に活用されたことになる。
とりあえずこの汗が引かないと何も出来ない。机の上に置いた鞄からノートを取り出して、それを団扇代わりにして顔に風を送る。始まる前に少しくらいは悪あがきをしたい。
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