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土星を何度か周回し、目的地である第八衛星ヤペタスを発見する。ヤペタスは地球の月とあまりにも似通っており、はじめ月そのものと勘違いしたほどだった。カルピスが言うには、主成分は氷からなっているらしい。だがカルピスの目的はヤペタスそのものではなかった。
「ハロー、ビッグブラザー」
真っ黒で何もない。大きさはきっちり1:4:9の長方形をしている。カルピスはそれをビッグブラザーとも、スターゲイトとも呼んだ。
「まだわからない? 2001年宇宙の旅だよ。『TMA・1』ってのはあれのこと」
俺たちはスターゲイトに近づいた。そっとその表面に触れるも、突起も傷も全くない。カルピスは俺の目を見ると、インベントリからゲームボーイを取り出す。そして電源を入れると、スターゲイトは光を解き放った。
スターゲイトの光のトンネルを抜け、気づくと俺は薄暗い部屋のベッドで目を覚ます。体を起こすとそこは幼い頃の俺の部屋で、ウィートリ―とクラップトラックのフィギュアがPCモニターの前に並んでいた。
ふと俺は抱えるほどのプレゼントボックスに気づく。包みを開けると不朽の名作『大乱闘スマッシュブラザース』だった。
本体にソフトをセットし、電源を入れる。キャラクター選択画面へと進めた時、俺はあることに気づいた。対戦相手として、強制的にプレイヤー2が選択されており、CP戦ができなくなっている。一人で二人分動かしたって面白くない。俺はゲーム機の電源を消すと、本体をインベントリにしまい込んで扉を出た。
「待ってたぞ」
そこにはカルピスが居た。カルピスは二人掛けのソファーに座り、コントローラーの一つを俺に差し出す。俺はコントローラを受け取り、カルピスの隣に座った。
「最後の対戦相手はカルピスか……」
「そう。最後に勝つのは、俺か、お前かのどちらかだけだ」
カルピスが笑った。つられて俺も笑った。
俺はリンクを選択する。カルピスはマリオを選択した。ルールはストック制、オールアイテム、オールランダムフィールド。
先に三機落としたほうが勝利だ。
聞きなれたカウントダウンが始まり、ゲームが始まる。
俺は今までで一番必死になってボタンを叩き回した。
それは、今までで一番最高に楽しい時間だった。
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