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前二つ、後ろ四つの防弾タイヤが回転を始める。V8気筒特有の高いエンジン音を響かせ、魔法、弾丸、レーザー、ビーム、剣に加えてロボットがなぐり合う荒野へと飛び出した。
多人数同時参加型オンラインゲームとして始まった『OASIS』は、度重なるアップデートを経て、今やもう一つの現実世界と言っても遜色ないほどにまで成長した。OASIS内の経済活動は現実の経済に大きな影響を与え、教育や、医療、果てには企業の本社機能に至るまでOASISの世界で行われていた。
もちろんゲームとしての側面も損なわれていない。世界中の大手ゲームパブリッシャー、デベロッパーとタイアップし、OASIS内にてプレイできるよう日々開発がすすめられている。アニメ、映画方面との協力関係も密で、あこがれのスーツを着て、あこがれの銃をぶっ放すなんてことも簡単にできるようになっていた。購入した、奪った、拾ったに限らず、手に入れた武器を使いたくなるのは当然の心理である。指定エリアにさえ行けば、PvP、すなわちプレイヤー対プレイヤーももちろんできるのだが、自分が所属する日本サーバーでは寂しいかな、閑古鳥が鳴いていた。
数千、数万人が入り乱れてもなお余裕のある荒野を何時間も突っ走って、ようやく一握りのプレイヤーに会えるかどうか程度だった。戦闘らしい戦闘もなく、どこからか不意打ちを食らって手に入れた武器をドロップするのが常である。これではゲームとして面白くもないし、プレイヤーが遠ざかるのも当然のことだった。
そこでOASISを救った四人の英雄が、失われた活気を取り戻すべく動き出した。彼らはOASIS史上最大の盛況を見せた『エッグハント』の日本限定版を開催したのだった。
賞金10億を懸けて。
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