2人が本棚に入れています
本棚に追加
「ルールは簡単。一、ヒントを見つけて。二、鍵を探し出し。三、イースターエッグを手に入れる。ね? 簡単だろ?」
「それは分かった。で、荒野に向かう理由は?」
俺はバッドモービル・タンブラーを運転しながら、大声を張り上げる。小さなフロントガラスの向こうに、ホワイト・グリントの影が見えた。
「最初のヒントが『荒れた戦士の集う場所』だったんだよ」
「それで荒野か!?」
タンブラーが石に乗り上げ大きく飛びあがる。車体の横を掠めて小型のミサイルが爆発した。
「あぁ! 俺の貴重なタンブラーが! だからこんな装備で大丈夫か? って聞いたんだよ!」
「これは祭りだからアイテムを無くすことは無いんだって! 言ったじゃん!」
隣で喚き声をあげているのは親友のカルピスだ。短い銀髪の十歳前後といった幼い風貌で、帽子の下からは髪の色と同じ猫のような動物の耳が見えている。アバターにそれなりの投資をしており、黙ってさえいれば相当かわいらしい。もちろん中身は男であることに触れてはいけない。
空に黒い球体が出現し、中から黒と桃色の機体が姿を現す。ホワイト・グリントは突如として現れた黒い機体にミサイルを放つ。だがミサイルが黒い機体へと届くより早く、一瞬でホワイト・グリントの背後に回り込んでいた。
「すっげぇ! ブラックサレナだ! ナデシコ知ってるか?」
「え? 知らん!」
カルピスは大声でまくしたてる。降り注ぐ砲弾や魔法を避けるのに必死で、それどころではなかった。
「おい、もうすぐ戦場だぞ!」
崖の下には群れる蟻のように、大勢のプレイヤーたちが戦い合っていた。何度かこのエリアに足を運んだことはあったが、これほどの数は初めてだった。カルピスはタンブラーの屋根から上半身を出す。そして腰のポーチから、赤道面で赤と白に色分けされた、つまむほどの大きさのボールを取り出す。そして唯一のボタンを押すと、野球ボールほどの大きさに膨らんだ。
「行け! リザードン!」
ボールの中からオレンジ色の体を持つ竜が姿を現す。大きく羽ばたき、疾走するタンブラーに速度を合わせた。
背後からの影が彼らを包み込む。それは上空を追い上げていくデロリアンだった。
最初のコメントを投稿しよう!