あなたはそこにいますか

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 脚部にタイヤのついた白い小型のロボットが岩を弾き飛ばす。他のプレイヤーたちの間を高速で駆け抜けながら、ナイトメアフレームのランスロットが片手で親指を立てる。目の端にチャットが入り込んだ。 「あいつ」  間髪入れずにアーウィンに俺を投げ入れる。続いて操縦席に飛び込むと一気に空へと飛び出した。対空砲火をローリングで弾きながら、超大型巨人の周囲を回る。  ランスロットがスラッシュハリケーンを巨人に突きたて駆けあがった。カルピスがアーウィンを駆り迫る巨人の腕を回避する。舌を噛みそうになりながら、チャットに『FUCK』とだけ送り返した。  荒野の向こう側から紫と緑の装甲を纏った巨人が、足を曲げ大きく跳躍してくる。空中でダガーを抜くと、首を切り裂いた。超大型巨人の頭が地上へと落ちていく。紫色の巨人はATフィールドであらゆる攻撃を防ぎながら、光となって姿を消した。 「見たか? エヴァまで出てきた。とんだ大怪獣決戦だ……」  周囲を蒸気が覆い尽くす。視界が思うように見えない中、空飛ぶ魔法の自動車を撃墜する。 「本当にここがヒントの場所だと思うか? うわっ!」  機首を上げ背後からの火球をかわす。赤い、翼膜のあるトカゲがぴったり背後について来ている。リオレウスだ。カルピスは歯を喰いしばりながら機首を上げ続け、リオレウスの背後に回り込むとレーザーを撃ちこんだ。 「は? どこ行けっていうの?」  地上から黒い斬撃を受け、片翼が切り落とされる。急に不安定になった機体の中で、俺は叫んだ。 「墓場だ! どんな戦士だって最後には墓場に行きつく!」 「なら、西に向かう! 墓場ならそっちだ!」  エンジンから煙をあげながら、アーウィンは片翼で強引に方向転換をする。その目と鼻の先に、ブラックサレナが出現した。 「緊急脱出!」  機体がロールしながらコクピットが開き、地上に向かって勢いよくはじき出される。俺はインベントリから蝙蝠を模した剣と、青地に金の翼膜のようなマークが施されたカードデッキを取り出す。そして地上に向かって落下しながら、初めて重要なことに気が付いた。 「くそが! 鏡がない!」  リザードンに乗ったカルピスが現れ、襟をつかみあげる。文字通り頭上を掠めながら、俺たちは戦場を離脱した。
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