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墓場は森林地帯に鎮座しており、古代アステカのピラミッドでもモデルにしたのだろう。大樹の間にようやく降ろされた俺は、無駄になった剣とデッキをインベントリに戻した。
「鏡も無いのに龍騎かよ」
「ナイトなら行けるかと思ったんだよ」
カルピスはリザードンをボールに戻す。目の前には苔と蔦に覆われた暗い入り口が挑戦者を待ち構えている。俺はナイトビジョンゴーグルを取り出すと、ドミネーターを片手に遺跡へと滑り込んだ。
「よく作り込んであるよな。こんなことなら鞭を持って来ればよかった」
ナイトビジョンゴーグルとXガンを片手に、カルピスは一歩前を進む。
「インディジョーンズよりもハムナプトラの方が好き」
「わからん」
足元でカチリと音がして、どこからか地響きがしてくる。カルピスが小さくごめん、と呟いた。
「お約束通りなら、転がる岩か、鉄砲水かだけど……」
歩いていた通路はわずかな下り坂となっており、前後共に遠くまで見通せない。少なくとも地響きは後ろから来ているようだった。
「おい、何か光ったぞ」
鈍い光が遠くに見える。カルピスはゴーグルを外して目を凝らすと、唐突に声を荒げた。
「逃げろ! 噛まれるぞ!」
真っ赤にブチ切れたワンワンが遺跡を震わせながら爆走してくる。俺たちはその姿を見るや否や必死になって逃げだした。
「ちくしょう! ちょっと遺跡を見に来ただけなのに!」
「ごめんってば!」
行く手を川が塞いでいる。俺たちはルパンもびっくりするほどの跳躍力を見せ、対岸へと転がり込んだ。ワンワンは飛沫をあげて川へと突っ込む。冷たい水に頭が冷えたのか、真っ赤な顔が黒い鋼鉄へと戻っていた。
俺は息を整えながら立ち上がる。目の前にはトーテムの彫刻が施された、両開きの扉がそびえたっていた。
「なにか聞こえる」
カルピスは扉に耳を当てる。俺も習って耳を当てると、確かに金属同士がぶつかり合うような音が聞こえていた。
「不規則だから、中でだれか戦っているのかもな」
そういって少しだけ扉を開ける。そして中の様子を見ると、すぐに扉を閉めた。カルピスが尋ねる。
「なにがあった?」
「クラウドさんと量産型黒の剣士が切り合ってた……」
「なるほど……」
俺はドミネーターを、カルピスはXガンがすぐに撃てる状態であることを確認した。
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