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UIとHUDが合成され、目の前に起動情報が表示される。原子炉が唸りをあげる。
「やっぱ旧式は最高だぜ! いくぞ!」
「おう!」
ターミネータが飛び出す。手元の榴弾をジプシー・デンジャーに向かって放つもダメージにすらならない。俺たちは拳をつき合わせ腕を大きく引いた時、ふとカルピスが尋ねた。
「字幕版で行くか、吹き替え版で行くか?」
「俺は、吹き替え版で行く!」
カルピスが笑った。
「「ロケットパァンチ!」」
俺たちは同時に叫ぶ。肘のブースターが点火しパンチの威力を底上げする。ターミネーターは迫る鉄拳を抵抗もなく受け入れた。大きな地響きと、大量の土が吹きあがる。森の中から大勢の鳥が飛び立ち、けたたましい鳴き声を上げていた。
「ほんと最高!」
あふれ出るアドレナリンを感じながら、地上へと降り立つ。ジプシー・デンジャーをインベントリに戻すと、ターミネーターの残骸へと向かった。
「そもそも、ここで合ってるかすらわからんけどな」
「でも楽しい」
「それ」
T-800の残骸は大きなくぼ地の底にあった。圧倒的な質量差によって文字通りスクラップになっていた。
「やりすぎたかな?」
残骸を漁るも歯車やシリンダー、引き伸ばされた頭蓋などばかりだった。
「タイムパラドックスならターミネーターがバック・トゥー・ザ・フーチャーか」
「フラッシュだな」
「よくぞご存じで」
残骸の中からノイズを出している物を引っ張り出す。それは今は無き、ゲームボーイのようだった。
「カルピス、ゲームボーイを見つけた。電源もついていないのに音が出ている」
カルピスに戦利品を手渡す。電池がセットされておらず、本来ならば動くはずのない代物だ。カルピスは俺の顔を見ると、電源を入れた。
緑色のランプが点灯し、ノイズが止まる。そして小さなスピーカーから、8bit調の声で言った。
「アナタハソコニイマスカ」
俺たちは顔を見合わせる。冷たい汗が額から流れた。
「アナタハソコニイマスカ」
俺は唾を飲み込むと、大きく息を吸い込んだ。
「俺は、ここにいるぞ!」
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