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軌道エレベーターで宇宙へと上がる。紫色の薔薇のような巨大な構造物は一定の速度で回転し、人工的に重力をもたらしていた。最外縁部は宇宙港となっており、デューカリオン、エンタープライズ号に加えて宇宙戦艦ヤマトまで停泊している。宇宙港と軌道エレベーターすべてを総称して、スターローズと呼ばれていた。
俺たちは空いた埠頭を適当に見繕い、インベントリから禍々しい緑濃色の戦艦を出す。船首には髑髏のレリーフが彫り込まれ、艦後部から黒い煙があふれ出ていた。
「こういうの好きだよな」
カルピスが言った。
「まぁな」
エアロックを抜け、艦内部へと入る。艦橋へと移動し操舵輪を握った。
「アルカディア号、発進!」
船体が大きく振動し、後ろへと転倒しそうになる。スターローズが遠ざかっていく。
「で、目的地は?」
カルピスは所有者でないにも関わらず船長席に腰かけ、足を組んでいた。
「『TMA・1』って画面に出てただろ?」
「だから、どこだよぉ……」
肩越しに振り返る。ヒントを見て宇宙へと言ったのはカルピスだった。
「なんとなく見えて来たけどね。まぁ、とりあえず宇宙ってわけ」
「んで、宇宙のどこよ?」
カルピスは腕を組みしばらく黙り込むと答えた。
「記憶が正しければ――土星の第八衛星ヤペタス!」
最短ルートを検索する。地球を半周したのち月、火星、木星でスイングバイして向かうのが最短ルートだった。
「で、元ネタ分かったんだろ? 教えろって」
「教えぬ」
カルピスはニヤニヤして言った。
「有名だから名前くらいは知っていると思う。とりあえず土星へ行こう」
俺はため息をつくと、操舵輪を掴んだ。
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