あなたに、会いに行く

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あなたに、会いに行く

「生まれ変わったら何になりたい?」 リカはいつも同じ事を聞いた。 決まって窓の外を眺めながら。 私の答えはいつも同じだ。 「もう一度人になりたいね」 リカは少しだけ寂しそうに笑い、言葉を返す。 「私はね、鳥になりたいかな。何にも縛られず、遠くまで飛んでみたいなぁ」 リカは飛びたい、と言うが、視線は空を向いていなかった。 施設の門だけを見ている。 「本当は、会いたいんでしょ?」 「え?」 「リカの彼氏、最近は来てないよね。面会謝絶って訳でも無いのにさ」 「仕事が忙しいって言ってたから。それに私はもう、お荷物みたいなものだし」 彼女の瞳は、暗く澱んでいた。 まるで泥沼のような色合いだと思った。 「お荷物だなんて、そんな……」 「良いの、気を使わないで……ゲホッゴホッ!」 「ちょっとリカ! 大丈夫!?」 「うん、平気。ちょっと、むせただけだから」 「そう……なら良いけど」 私は気が気じゃ無かった。 また独りぼっちになってしまう気がして。 孤独ほど辛いものはない。 こんなささやかな会話でさえ、荒んだ心にぬくもりを与えてくれるのだから。 だが、リカには不十分のようだ。 彼女はよく笑うが、いつも寂しさをどこかに残す。 外に縁を持つ人は、自分とは少し違うのだろうか。 だから彼女は暇を見つけては窓辺に立つのだ。 その後ろ姿。 微かに震える背中を見て、私は意を決した。 「リカ、行こう!」 「どこへ?」 「あなたの彼氏のところ! コッソリ抜け出して会いに行こうよ!」 「ダメだよ、そんなこと……。見つかったら大変な目にあっちゃうよ?」 「リカは待ってるだけで良いの? 彼氏が来てくれる日を、ただジッと待ってるだけで良いの!?」 「……そんな事ない、今すぐ会いに行きたい!」 「わかった。じゃあアタシに任せて! 必ず外に出してあげるからね」 ※ ※ ※ 『最新のニュースをお届けします。先程、無期懲役の判決を受けた女囚2名が、刑務所から脱走したとの情報が入りました。付近にお住まいの方は、不審者に十分警戒をしてください』
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