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冷たいひと
「氷みたい」
そう言ったのは千波だ。
由貴は冷たい。氷みたい、と吐き捨てるようだった。
蔑むような目で射抜かれて、由貴は足がすくんだのを今も鮮明に覚えていた。
中学生のころのことだった。
不意にその記憶を思い出したのは、未だに新しいクラスに慣れることができていないからだろう。
高校生になって二週間が経った。新しい校舎、新しい教室、新しいクラスメイト。毎日どこか緊張していて、ひとりの友だちも作れていなかった。
家の近くの公園に寄ったのは、新しい生活に少し気疲れしていたからかもしれない。
小さな頃によく遊んだ公園だった。
すべり台やジャングルジム、シーソーに鉄棒、ブランコ。定番のカラフルな遊具があり、いつもは子どものはしゃぐ声を聞くことができた。
しかし、今日は寒いせいか遊んでいる子がひとりもいなかった。肩透かしを食らってしまい、由貴は口を尖らせた。
気を取り直してブランコに乗って少し揺らしてみると、小さな子どもに戻ったみたいで、ほっと息をついた。
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