冷たいひと

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 冷たいと言われることは時折あった。女子同士で集まると、お互い口裏を合わせて、誰かがかわいそうだとか、目立っちゃいけないだとか、悪口も含めて、同調圧力と同情が蔓延することがよくあった。  由貴はそういうやりとりがあまり得意ではなかった。きっと言わない方がいいんだろうな、と思いながらも、本当のことを言ってしまうことがあった。 「でも、高橋だって友だちと遊びたいとかあるんじゃない? ずっと一緒にいたら、息が詰まるじゃん」  初彼ができて、「彼氏が一緒にいてくれない」、「私はこんなに好きなのに」とやすえが泣いていたとき、同じグループのみんなは同情的だった。高橋のやつひどいね、というみんなの言葉に雪は違和感を覚え、つい口をついて言葉が出ていた。 「由貴ひどい」  そう言い出したのが誰だったかは覚えていない。気づけばみんなに責め立てられていた。千波を見ると、みんなと同じ、蔑むような目をしていた。ショックだったのは、千波と当時一番仲がいいと思っていたからだ。  あの時から緩やかにグループの中で無視されるようになり、由貴は違うグループをはしごして日々を過ごした。  軽く漕いだつもりだったのに、ブランコはずっと高くまで上がり、目を大きく見開いた。  小さころはこんなに簡単に漕げなかった気がするのに。  見上げた空は薄い灰色で覆われていた。
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