第一章 カササギ伝説殺人事件

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 小箱が初めてここにやってきたあの夜。  女の子を夜間に追い出すわけにもいかず、一晩だけのつもりで家に入れた。  ところが、あれからずっと出て行かない。  和寿の部屋で寝起きして、ここから鎌倉八雲高校に通っている。  一人暮らしで借りた1LDKマンションに、寝室は一つしかない。  女の子なので、その一つしかない寝室を明け渡し、和寿はリビングで寝起きしている。  (ひさし)を貸して母屋(おもや)を取られるとはこのことだ。  鎌倉八雲高校の制服も届き、今は同じ恰好となったが、しばらくは違う制服で通っていたのと、サクラソウ事件を解決したことで目立ってしまった。  濡れ衣を着せられそうになった苫米が、汚名返上とばかりに触れ回った効果も大きい。  そのため、女子高生探偵としてすっかり有名になった。  和寿としては、一刻も早くこの問題を解消したい。  親戚とはいえ、男女が一緒に暮らすのも、同じ学校の同じクラスなのも、いろいろ含めて立場上まずいことも知っている。  小箱は、身内であることがバレるなんてまったく想像していない。 『この学校って、佐藤姓が多いわよね。こんなに多いんだから、親戚だなんて誰も思わないから』と、振り切られた。  確かに、佐藤は多い。苗字からバレる心配はないだろう。  あとは、二人の行動だ。  そこから怪しまれないように、学校では極端に冷たく無視している。
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