最終章 付きまとう影

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 よほど、和寿の声に生気がなかったらしい。 「転校の理由を学校になんて言ったんだ?」 『小箱が自分で手続きしたから、特に聞いていない』 「……わかった。後は小箱に聞いてみる」 『あまり、問い詰めるなよ。あいつはまだ子どもなんだ』 「ああ」  その子どもを、弟に丸投げしている自分はどうなんだと思いつつ電話を切る。 (家族の引っ越しについて、兄貴は何も言わなかったな……。知らないということか……)  それはつまり、小箱がウソを学校に伝えたということ。 (ストーカーだなんて……。そうか! あのトラップは、ストーカー対策か!)  小箱が毎夜、布団の周りに結界のように張り巡らすペットボトルのトラップ。  誰かが忍び込んでも、引っ掛かって音が出る。それで小箱は目が覚める。  上手くすれば、隣の部屋の和寿にも聞こえるだろう。  仕掛ける理由について、これで合点がいった。 (あんなもんに頼る前に、俺に相談すればいいのに……)  平気な顔をしているようで、毎夜怯えていたのかと思うと和寿は苦しくなる。  自分にできることはなんだろうかと悩む。
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