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帰宅すると、シチューの匂いと小箱の笑顔が出迎えてくれた。
それは、すでに和寿にとって日常光景となりつつある。
「おかえり!」
いつもの笑顔が今はとても眩しい。
「小箱……」
和寿の暗い表情で、すぐに異変を察した小箱が眉をひそめた。
「何かあったの?」
不安にさせてはいけないと思いつつも、真っ先にストーカーのことを聞いた。
「ここに来た理由を、兄貴から全部聞いたよ」
「え……」
「なんで一番に相談してくれなかった。俺はそんなに頼りないか?」
「心配かけたくなかったから。それに、理由を知ったらここに置いてもらないかと心配で」
「そんなことはない。知らなきゃ、対策も立てられないだろ。あのトラップだけで対処できるわけがない」
「………………」
小箱が少し嬉しそうになったので、和寿は真剣に怒った。
「何が嬉しいんだ? 大変なことだろう」
「信じてくれたんだ。ストーカーの話」
「そりゃあ信じるよ。……どういう意味? ウソなのか?」
小箱は首を振る。
「ううん。ウソじゃない。だけど、こういうことって、証拠がないじゃない? 思い違いとか、騒ぎすぎとか。信じてもらえないと思っただけ」
「小箱の言葉は信じるよ」
「嬉しい……」
「兄貴たちは信じてくれたんだろ」
「私が無理を言って、強引に説き伏せたようなものだから」
小箱は、温めたシチューを和寿に出した。
「それより、お腹空いているでしょ。先に食べたら? これもおばあちゃんから教えてもらったんだけど、おばあちゃんは赤ワインをたっぷり入れるの。私は未成年で買えないから、作れないと悩んでいた。だけど、ブドウジュースで代用できるんじゃないかと思いついたから作ってみたんだ。そうしたら、なかなか美味しくできたのよ」
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