最終章 付きまとう影

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「那由からの最後のメッセージは、『もうすぐ家につくから、またあとでね』だった」 「それで最後? 『お洒落なスーツの男』だけでは、絞り込めないなあ。女子高生が気に留めたのだから、おそらくイケメンで若い男。そんな奴はたくさんいるし、もう少し情報が必要だ」  和寿が悩んでいると、小箱が、「まだ見せたいメッセージがある」という。 「正確に言うと、これのあとにも那由のスマホからメッセージが入ったの」 「さっきのが最後じゃなくて?」 「ええ。これを見て」  小箱は、和寿に自分のスマホに届いたショートメッセージを見せた。 ――『全部見ている』  決していい意味ではないことは、和寿にもわかった。 「これは、どういう意味だ?」 「犯人が那由のスマホで私に送ってきたのよ。それまでのやりとりを読んで、けん制したかったんでしょうね」  和寿は、ゾッとした。  たったの6文字が恐怖を与える。  那由のスマホには、小箱の連絡先や顔写真などの個人情報が満載だったろう。  スマホから情報を抜き取ることなど、とても簡単。  小箱は、正体の見えない犯人によって丸裸にされたようなものだ。 「小箱の言うストーカーって、こいつのことか!」 「そう。私の顔も名前も家も電話番号も、全てこの犯人に知られていて、どこかで私を監視している。それで、誰にも本当のことを言わないでここに逃げてきたってわけ」  単なる我がままで、転校してきたんじゃなかったということだ。
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