最終章 付きまとう影

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 過度な不安をあおるような真似はしたくないのだが、もはや巻き込まれている小箱には、女子高生連続不審死事件の詳細を伝える必要があると和寿は考えた。 「そいつはただのストーカーじゃない。危険な殺人犯で、もしかしたら連続殺人を犯しているかもしれない。友人を殺した犯人が逮捕されれば、小箱も安全になる」  それしか逃れるすべはない。 「そいつは、シリアルキラーだってこと?」 「そう。ここ数年、神奈川県南東部で数件の女子高生不審死事件が発生していて、いずれも未解決。警察によると、同一犯による殺人かもしれないそうだ」 「そいつは、女子高生に異常な執着をみせているってことか」  和寿は、協議会の資料を取り出した。 「敵を知るためには、過去の事件について調べることが一番。ここに、一連の事件をまとめた資料がある。これで何かわかるかもしれない」 「私も自分なりに那由の事件について調べていたから、合わせればいろいろわかるかもね」  小箱が前向きになってきた。  和寿が事件の概要を読み上げる。 「事件の発生場所だけど、三浦市で1件、横須賀市で3件、藤沢市で2件だ。佐藤那由さんの高校は横須賀だが、事件が起きた自宅は三浦だから、三浦市でカウントされている」  発生日時を見比べる。  直近が佐藤那由で、今年の4月5日。  内仲皐月、横須賀市、昨年12月20日。  宅間恵津、横須賀市、昨年5月13日。  佐連真、横須賀市、2年前の5月29日。  頃本里美、藤沢市、3年前の10月30日。  皆川理香、藤沢市、4年前の6月10日。  小箱は、資料を見て、発生場所と時期に着目した。 「こうして比べてみると、三浦と横須賀の事件は距離的にも発生時期も近くて、藤沢市では2年前から起きていないわね。犯人の拠点が移動しているということかもしれない」 「つまり、犯人は3年前まで藤沢市付近に住んでいたという仮説が立てられるな」 「それと、ここ一年は事件の間隔が短くなっているのが気になる」 「殺人衝動を抑えきれなくなってきているのかも」  これはうかうかしていられないと、和寿も小箱も深刻に思った。
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