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スマートフォンがぶるぶる震えて、小箱からショートメッセージが来た。
『献立は決まった?』
和寿は、『まだ、決まっていない』と返信する。
いやな予感で胸の中がざわつく。
和寿は、はやく小箱の顔を見て安心したいと、献立を決めぬまま、適当に野菜と肉を選んで買い物籠へと放り込んだ。
家に帰ると、小箱が待ちかねたように飛び出してきた。
「お帰り! 和寿さん!」
「ああ、ただいま」
小箱の顔を見て安心する。
「何を買ってきたの?」
小箱が、ワクワクしながら買い物袋を覗き込む。
「うわあ、いろいろ買ってきたね、これで何を作ってくれるのか楽しみ!」
「そのことだけど、ごめん。適当に買ってきた。何を作ればいいのかさっぱり思いつかなくて……」
「え?」
小箱は吃驚したが、すぐに笑顔になった。
「もう、しょうがないわね。私が作るから、そんな凹んだ顔にならないでよ」
和寿は、小箱の笑顔がこの世の全てと思えるほど愛おしくなった。
ずっとずっと見ていたくなる。
――魅囲篤輝の影が、二人の住むマンションの玄関に近づいた。
「ここに入っていったな……」
インターフォンを押すと、部屋の中で音が響き渡る。
“ピンポーン”――
【女子高生探偵佐藤小箱】 終わり
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