第一章 カササギ伝説殺人事件

1/54
121人が本棚に入れています
本棚に追加
/177ページ

第一章 カササギ伝説殺人事件

“ジリリリ……”  目覚まし時計のアラームに起こされた佐藤小箱は、極端に寝起きが悪い。いつだって爽やかな目覚めとはいかない。 「フワアアア……」  大きくあくびとともに、上半身を起こす。しかし、思い通りに動かせない。  ベッドから寝ぼけまなこではい出ると、ふらふらと立ち上がって歩き出した。  途端に、枕元に張られたタコ糸に足が引っ掛かって転倒した。 「わあ!」 “ドン! ガチャガチャガッチャン!”  タコ糸の両端に縛られた二つのペットボトルがはずみで宙に舞い、中に入れられた数個のビー玉によって派手な音を立てて小箱の上に落ちてきた。 「どうした!」  音に驚いた和寿が、慌ててドアを開けて入ってきた。  パジャマ姿の小箱がタコ糸に絡まって、2本のペットボトルとともに倒れている。 「何をやっているんだ?」 「アイテテテ……。寝る前に、トラップを仕掛けていたことを忘れていた……」  起き上がった小箱は、ぶつけた膝をさすって痛がっている。 「トラップ? もしかして、お前は俺が夜中に忍び込むんじゃないかと考えて、罠を仕掛けたというのか? 俺がそんなことをするか!」  自尊心を傷つけられた和寿は憤ったが、小箱は違うと否定した。 「違うよー。泥棒避けのおまじないみたいなもの。叔父さんのことは信用しているってば。そうでなければ、一緒に住まないよ」 「それもそうか」  和寿は、思い直して落ち着いた。 「でも、トラップはやめろ。朝から近所迷惑だ。そうでなくても、変な目で見られる状況だというのに」 「ファーア……」  我関せずの小箱は、ボサボサの頭で大あくび。 「真面目に聞け」 「そんなことより、いつまで見ているのよ」 「ググ……」  和寿は、部屋から出ると扉をバタンと閉めた。
/177ページ

最初のコメントを投稿しよう!