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「へえ、そうなのね。その人も人間界を巡っていたのなら、どこかで異界との繋がりを見つけてもおかしくなかったんじゃない?」
「それは……分からない、かな」
少なくともそういった話は聞いたことがない。彼が教えていないだけならば話は別だが。
ただ、手紙に書かれた“奇妙な知り合い”の存在が気になる。なぜその人物が家族の所在を知っているのか、そもそもどうやって知り合ったのか──
「フウナ、それは少し違うの。能力者はともかく、魔力を持たない人間が異界に入ることはエルバード神が許さないの。でもマイリアのような『隠れ能力者』は違うの。彼らが異界を訪れた時には、神からの許可証が発行されるの」
「許可証……? どこかでそんな紙が出ているんですか?」
「紙ではないの。その代わりに、体のどこかに刻印が現れるの。マイリアも目を瞑って感覚を研ぎ澄ませば場所が分かるはずなの」
「刻印……」
言われた通りに目を瞑り、意識を体の内部に集中させる。ドクン、ドクンと脈打つ鼓動の中にひとつ、違和感を発見する。熱いような、それでいて氷のような冷たさが共存した部分。
「ありました。おそらくこのあたりに」
鎖骨あたりを指差して言う。他の人に見せていいものか分からないが、この位置なら服で隠れるので問題はないだろう。
「ふむ……その位置では確認しにくいだろうから、後で鏡で見ておくといいの。その刻印は能力者としての命と言っても過言ではないから、あまり他人に見せないようにするの」
「わ、分かりました」
万一のことがあって刻印が消えてしまったら元も子もない。コクリと、真剣に頷いた。
「それと、わたしにも敬語を外してくれると嬉しいの」
「え? ……あー、1回敬語に戻したらタイミングが掴めなくて。──これでいいかな、サナ?」
「こっちのほうがずっといいの」
ふふっと控えめに笑うスミレ色の少女を見て、素直に綺麗だという感想を抱く。リンノやカエノは幼い子供のような愛らしさがあるが、サナの場合はどこか人間離れした美しさを感じる。フウナの場合は親しみやすいお姉さんといった感じだ。
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