私以外の人間

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「──良いこと思い付いたわ! 明日マイリアに異界の案内をするのはどうかしら? おすすめの場所があるのよ。異界の観光だと思って気楽に堪能してみない?」 「異界の、観光……!」  フウナの提案にはとても興味がある。ここでの食事は人間界で食べ慣れたものだったので、せっかくだから異界の食事も体験してみたい。周辺の土地感覚も把握しておきたかったのでちょうど良い。 「え、お外に行くの? ズルい! リンたちも行きたいー!」 「そうやそうや! ワイらが出れへんのに不公平や!」 「お土産はシェリアード店のタルトタタン」 「「ならよし!」」  リンノとカエノは簡単に納得したようだ。行きたいなら付いていけばいいのに、という考えはサナの言葉にかき消された。 「あの2人は存在自体が特殊だからあまり外には出られないの」 「そうなんだ……。あれ、妖怪の変幻の力って、」  視線が合わなくなった。つまりはそういうことらしい。 「あー、ナユがいてくれたら外に出られるのになぁー」 「今だけでもええからあの力が欲しいもんや」 「ナユが帰ってくるのは不定期だからなぁー」  どうしよう。仮にこの2人が外に出られたとしも迷子になるビジョンしか浮かばない。洞窟内にいた方が色々な意味で安全なのかもしれない。 「わたしは実験があるから案内は出来ないの。フウナ、よろしく頼むの」 「任されたわ。何か買っておくものはあるかしら?」 「面白そうな薬草があったら見繕って欲しいの」  りょーかい、フウナが返す。通常薬草は生えているものを採集するのだが、レアな薬草は案外そうでもない。店頭で高値で売られているが、ごく稀に時間経過により品質が落ちたものがまとめて安く売られるらしい。そういったものをサナは好んでいるそうだ。 「薬草って、サナは何に使うの?」 「実験で効能を調べて、最適な組み合わせを作って摂取するの。薬にしてストックもするの」 「へえ、ハーブティーとかかな。何だかオシャレだね。私も飲んでみたいな」  何故だろう。サナ以外が目を逸らし始めた。 「本当なの!? なら明日にでも準備するの。特製を作るの」  その言葉が悪夢の始まりだと知るのは、もう少し先の話だ。
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