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翌日、私はフウナに連れられて異界の街へやって来た。雰囲気に違いはあまりないが、鮭味の卵や不規則に光るアクセサリー、3分毎に味が変わる紅茶など、人間界では有り得ない商品が取り扱われている。それら一つひとつが私にとって珍しく、隣を歩くフウナに訊きながら回っていた。
「フウナ、あれは何?」
「あれは殴ると歌う鳥よ。やってみる?」
「いや、いいよ……」
「そう? あ、右の青い看板のお店がサナの行きつけのお店よ。まずはそこに行くわ」
目的地を見つけたのか、フウナは早足に店に入っていく。というか殴ると歌う鳥って……。
「いらっしゃいフウナちゃん! ……おや、後ろのお嬢さんは初めて見る顔だね。ロナード様はお留守番かい?」
「こんにちは。彼女はマイリアよ。今日はサナのお使いなの。いつものをお願い出来る?」
「おうよ。奥から取ってくるからちょいと待ってな」
ひと言二言慣れた様子で話したかと思えば、店員さんはいそいそと離れていった。フウナはその様子を横目に店内を物色する。壁、天井、床、あらゆる場所に薬草が用意されていて、まるでジャングルだ。薬草にはあまり詳しくないが、どうやら籠ごとに種類が違うらしい。
「フウナもよく来るの?」
「ん、まあね。今みたいにサナのお使いの時もあれば、個人的に行く時もあるわ。薬草は美容にもいいんだもの。アロエやドクダミ、ローズマリーとかね」
「へえ。詳しいんだね」
「サナから教えて貰ったのよ。それにサナよりは大分マシな使い方をしてるはずよ……」
「え、それってどういう……」
今、不穏な言葉を聞いた気がした。だが聞き返そうとしたタイミングで店員さんが戻ってきた。
「ほい、いつもの品物だ。今回も掘り出し物が入ってるぞ!」
「ありがとね」
「ついでにオマケの薬草クッキーだ。マイリアちゃんと一緒に食べな」
「あっ……ありがとう、ございます」
薬草クッキー。何だかおしゃれだ。
代金を払って店を出る。ちなみに薬草の詰め合わせは300エルだった。安い。
「そういえばマイリア、人間界のお金ってどんな感じ?」
「相場はそんなに変わらないかな。多分名前が違うだけだよ」
「そっちではたしか……アール、だったかしら?」
「うん、そうだよ。それにしてもさっきのお店は随分と安いんだね」
「サナが贔屓にしてるから安くしてもらってるのよ。普通に売ってる薬草は基本的に高品質高価格だからね……おっと、」
フウナが何かに気付いて足を止める。視線の先には、道の真ん中で幼い女の子が泣いていた。道行く人は面倒事には関わりたくないのか、目もくれず通り過ぎていく。そんな中、フウナはその子の方へ近付いていった。
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