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「いやーごめんゴメン、ようやく見付けられたヨー」
「遅い。あと探す途中で寄り道したな?」
「知ーらなーいねェー」
「張り倒すぞ。楽器に傷は無いか?」
「うん! あそこの黒髪のお姉サンが拾ってくれたンだ!」
「…………あいつは、」
「知り合いかナ?」
「──いや、何でもない」
「ふぅーン? まあイイけど。詮索はしないハクアイシュギシャだからねっ」
「早く準備しろ」
「泣くヨ????」
***
「お待たせ。カフェオレ買ってきたわよ」
「お疲れ。よく見付けられたね」
「んー? ま、まあね? ちょっと裏技を使って見付けたのよ。感謝もされたし結果オーライなんだけど」
フウナはいいとして、果たしてさっきの出来事は結果オーライだったのだろうか。逆に私が困っていたのだが。
ふうん、と軽く返してカップに口を付けると、待ち受けていたのは程よい苦味と控え目な甘味────ではなく、とんでもない苦さだった。
「にっが!」
「あ、言い忘れてたわ。それ時間が経つとだんだん甘くなるやつよ。買ったばかりで飲む人は余程の猛者だわ」
「それ早く言ってよ……」
やはりここは人間界ではなく異界だった。
確かに少し時間を空けて飲むと、今度はほんのりとミルクの味もした。フウナは何度か飲んだことがあるのか、このタイミングでようやく口を付けていた。
「あーおいし。これ最近有名になってきたからちょっと並んだのよね」
「へえ。気になったんだけど、情報ってどこから入るの?」
「掲示板が主体ね。毎日更新されてるわ」
「そうなんだ。もっと近未来的かと思ってた」
「そこらへんは古き良きって感じね。アカデミーで能力を鍛えたり、大会で競い合ったりはするけど」
「あ、それは楽しそう」
人間界でいう運動会みたいなものだろうか。ぜひ見てみたいものだ。それにしても掲示板。人間界とは少し違うようだ。
「それはそうと、今日のメインイベントがもうすぐ始まるみたいよ。あっちを見てちょうだい」
「あっち……?」
フウナが指差した方向には、広場の中央ステージが鎮座していた。わらわらと人が集まってきている。そのステージに立っていたのは、私と同年代であろう青髪の少女と、何と先程の笛の持ち主だった。
「あの子、有名人だったんだ」
「知ってるの? アタシも片方は知り合いなんだけど」
「知ってるっていうか、さっきその人の楽器を拾ったんだ」
隣からブッという音がした。普通に汚い。軽く噎せていたので少し背中をさすってやった。ちなみに現在のカフェオレはミルクが8割といったところだ。
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