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「ほ、本当っ!?」
「まだ確証はないの。それに人間が異界に迷い込むなんて、本来はあり得ないことなの。それこそ能力を持ってない限り……。だからマイリア、少し落ち着くの」
「ご、ごめん……」
身を乗り出していたことに気付き、体制を整える。そして深呼吸。スゥー、ハァー……よし。
「それで、能力って?」
「分かりやすく言うと、能力とは異界の人が必ず持っている不思議な力のことを指すの。能力の種類は千差万別だけど、基本的には火・水・風・地・光・闇やその派生タイプがほとんどなの」
曰く、異界の管理神エルバードは能力を持たない人間を嫌い、異界に入れないようにしているだとか。しかし稀に人間界で生まれる能力者については、異界に入ることが可能らしい。それが私や例の子という訳だ。
「マイリアの家族かは分からないけど、人間界からやって来た子をひとり知っているの。名前は……ナユリス。彼女は数年間、わたしの元で能力の特訓をして異界で生きていく術を身に付けたの。今は楽師として異界で生活しているの」
ナユリス。そんな名前は聞いたことがない。残念ながら私の家族ではないらしい。でも人間界からやって来たのなら、何か情報を持っているかもしれない。
「……その人、どんな人だった?」
「確か──」
「なになにー! ナユの話してんの!? リンも交ぜてあ痛っ」
バン、と音を立ててドアが開いたかと思うと、あまりの勢いのよさにドアは跳ね返り、何かにぶつかる音が聞こえた。
「リンノ! 話終わるまで入るなってサナ言うてたやろ!」
「あれー、そうだっけ? ナユの話が聞こえたからつい!」
「ついちゃうわ! お客はんが引いてまうやろ」
闖入者の正体は、リンノというとても小さな少女だった。額をドアにぶつけたようで、右手でさすっている。次いで独特な口調の少女が入ってくる。サナは特に表情を変えずに「リンノとカエノなの」と2人を紹介してくれた。
2人の容姿は独特なものだった。民族的な意味もあるのか、女性神職者の装いを纏い、“ゲタ”なるものを履いている。そして1番の特徴は、それぞれ猫のような犬のような獣耳が生えている。……か、かわいい。
「まあまあ、なの。そろそろ呼ぼうと思ってたから問題ないの。この子はマイリア。2人共、自己紹介するの」
「はいはーい! リンの名前はリンノ! それでこっちはカエノ!」
「ワイらはサナの使い魔ちゅう立場やが、気にせんで仲ようしようや、マイリアはん」
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