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「……って、使い魔?」
これ以上は話が脱線してしまうからと、簡潔に説明された。
サナは能力者の中でも高い立場で、使い魔を使役する権限を持っている。それで妖怪種であるリンノとカエノを使い魔とし、共に暮らしているそうだ。
ちなみに妖怪とは、異界が作られた際の時空の歪みによって作られた存在らしい。人間の空想上のみだった存在が、異界の出現により具現化されたとのことだ。
今は2人の意向で人型をとっているが、本来の姿はもっと威厳がある……らしい。
「さあ、紹介終わったよ! 早くナユの話しようよ!」
リンノの耳がピョコンと楽しそうに揺れる。見ていてとても癒される。
「ええと……リンノはナユリスって子と仲が良かったの?」
「もっちろん! ナユってばね、初めて会った時はリンより小さかったくせにさあ、すっごい生意気だったの!」
このくらい、とリンノが自分の肩辺りを指差す。その身長から察する限り、ナユリスという少女はかなり幼い頃に異界に来たと考えられる。
「それは仕方ないことなの。幼子がたった1人でここまで来たもの、警戒するのは当たり前なの」
「あー、よう分かるわ。それにお前のストッパーが増えて正直助かってたんや」
「それは同感なの」
「はれれ!?」
おっかしいなぁ、とリンノがぼやく。
以降の会話を聞く限り、ナユリスは能力の出現により人間界から離れ、その代わり異界の空気に馴染んでそのまま異界に留まっているようだ。
人間界では、能力者の存在はあまり良く思われていない。近年ではほぼ確認されていなかったが、それは彼らが能力のことを隠していたからだろう。
「ねえサナ、その子が異界に来たのは本当に幼い頃だったんだよね。何ていうか、その……ずっと洞窟にいることは出来なかったの?」
「異界に留まり、洞窟を出ることを選択したのはナユリス自身なの。それはあの子が決めた第二の人生だから」
「……そうなんだ」
たしかにサナの言う通りだ。彼女には彼女なりの理由があったのかもしれない。
「ちなみにこれは、マイリアにも言えることなの。あなたはこの先どうしたいか聞きたいの」
この先。それは人間界に戻るか、異界で旅を続けるか、という意味も含まれているだろう。
異界へ足を踏み入れたということは、私が能力を持っていることを証明している。そもそも人間界に戻る方法は分からないし、戻ったとして万が一バレたら大変なことになる。かといって異界に留まるには、知識が足りず危険だ。だが『家族の情報』が手に入った。そして私は旅人で、目的があれば何処へでも行くことが出来る身だ。
──なら、答えはひとつだろう。
「……私、その子に会いたい」
リィン、と不思議な音がどこかで鳴った。
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