私以外の人間

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「おいしそー! マイリア連れて来たよー!」 「ご苦労様なの。マイリアのために人間界の食材を使ってみたの。口に合うと良いのだけど」  テーブルを彩る料理の大体は、人間界で見覚えのあるものだった。その中に黄金色に輝く三日月型の卵料理、すなわちオムレツを見付けて思わず口元が緩む。  ……オムレツ。アレン兄さんとよく食べていたな。 「オムレツ、好きなのかしら?」 「あ、はい。昔よく食べていて、思い出の料理です。……えーと、」 「フウナよ。サナから話は聞いているわ。よろしくね、敬語はナシよ!」  そう言って、フウナは片手を差し出す。挨拶の仕方は人間界と同じらしい。握手した途端に軽くハグされたのはびっくりしたが。 「むぐむぐ……やっぱヘンテコな能力だよなー。『カデン』ってやつ?」 「おいしー」 「……って、食べるのが早いわそこの妖怪ども!」 「「さっせーん」」 「反省する気がないわ……」 「まあまあ、お話は後にするの。せっかくの料理が冷めるの」  はいはーい、とフウナが返す。何となく4人(?)の立ち位置が分かった気がした。  食事はかなり、いやとても美味しかった。定番の家庭料理が大半だったが、ひとつひとつ工夫がされていて飽きがこない。特にトマト煮込みの肉はパンに挟むと非常に合う。これはパンだけでなくリゾットにしてもいけると思う。   「これは……とても美味しいです」 「ふふん。お気に召したようで良かったの」 「フウナ! デザートお代わりー!」 「そのくらい自分でやりなさいこの猫又!」 「あ、ワイも食べよ」  何だか賑やかだ。こんな風に家で誰かと食卓を囲むのは久し振りだ。  3口でデザート(特大パンケーキ)のおかわりを食べ終えたリンノは、さらにカエノのパンケーキを狙う。それに対してカエノは尻尾を巨大化させて壁を作り、その手を阻んでいた。なかなかにカオスな光景だが、小さい子がじゃれあっているようにも見えるのでよしとしよう。かわいい。 「そう言えば、マイリアは人間界出身よね。あっちでは何をしていたの?」  食後のコーヒーを味わいながらフウナが尋ねる。彼女は苦味が得意らしくブラックで飲んでいる。ちなみに私はミルクを淹れる派だが、パンケーキがかなり甘かったので今回はブラックだ。 「たくさん絵を描いていたよ」 「絵を? 画家かしら?」 「うーん、正確には絵描きの旅人……かな。養育者が元々そんな人で、よく絵を教えてくれたんだ。それであの人がまた旅に出て、今の私に何が出来るか考えて、私も旅に出ることにしたの。絵を描くのは好きだったしね」  当然、子供である私の持ち合わせは非常に心許なかったので、滞在する街で描いた絵を売っては旅費を稼いでいた。そう考えるとずっと旅をしていたアレン兄さんはかなりお金に余裕があったのだろう。少々羨ましく感じる。
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