僕は大声で君に声援を贈る

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「今晩は・・・」 引き戸の途中で美咲の声だと判った。 「遅れてごめんなさい・・・!  ええっ大滝くんに佐田くんも!  何年振り?」 「変わらないなあ、美咲。  50前には見えないよ!」 「佐田くん、相変わらず、  口が上手いんだから」 二人のやり取りを聞きながら、 僕の心はたちまち 17の頃に戻ってた。 (美咲、君が・・・好きだった) 「高杉の葬儀には来れなくて」 佐田の言葉に慌てて 「僕も・・・申し訳、」 「いやあね、ヤメてヤメて!  二人とも日本にはいなかったんだし、  もう気持ちも落ち着いた、  …ありがとう」 佐田はニューヨーク、 僕はフランクフルトと仕事の都合で 数年間日本にはいなかった。 だから半年前に 「高杉が事故で死んだ・・・  車がカーブを曲がれず  崖から転落した」 中尾から連絡を受けても 駆けつけることが無理だった。 「よし!改めて20年ぶりに  全員揃ったことに乾杯!」 中尾が用意してあった陸上競技会の時の 記念の写真。 皆で高杉に向かってグラスを上げた。 「そういえば去年佐田君、  結婚したんですってね?」 美咲に言われて 「ウチは会社で残り物同志がクッツいた  だけのこと、羨ましいのは大滝だよ」 「そうそう、一回り下の奥さんですって?  もう子供さん、幾つ?」 麻理子がふってきた話を 「3つになるよ、それよりお前達、  結婚は?」 巧く逸らせた。 「この人達は高校の時からクッツいたり  離れたり、忙しいから、フフ」 僕が何より惹かれたエクボを、 美咲が見せて笑った。 「美咲のとこは大きいだろ?」 僕は二人に最後に会った美咲達の結婚式を 思い出しながら尋ねた。 「大学生と高校生、  下の子は私達の後輩よ」 「そう・・・」
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