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なにやらひそひそ話し合う二人に声をかけてみると、今度は和葉のほうが海道くんを引きずって戻ってきた。さっきにも増して楽しそうな彼女の横で、クラスメートはこれ以上ないくらい首をねじってあさっての方を向いていたりする。
「いやーごめんごめん、ちょっと話し込んじゃって」
「それはいいんだけど……仲良かったんだね、二人とも」
「べっ、別にいいってワケじゃ……!」
「ちょっとおととし吹部のコンサートで知り合ってさ。ねっコーチ」
「ウソつけ、そんな穏やかなもんじゃなかったろ! 舞台袖で待ち伏せて補欠入団させろってねじ込むとか聞いたことないぞ、つかコーチってなんだ!!」
「だって関係者に頼むのがいちばん早いと思ったんだもーん。コーチはほら、これから羽依が習うから!」
「お前なぁ!」
「……大変だったね、それ。お疲れさまです」
「う゛っ……や、別に、迷惑ってほどじゃないし」
和葉、知らない間にそんなことやってたのか。さらに予定をガンガン詰めていく幼なじみのマイペースっぷりに、思わず労わるまなざしを向けると、もごもごフォローしてくれる海道くんである。いい人だなぁ。
そんな周りのやり取りをよそに、なんだかご機嫌の和葉はさっさと次の話題に移ろうとしていたりするが。
「そういやさ、最近この辺で怖いうわさが流行ってるんだけど知ってるー?」
「あんだよいきなり……知らねーけど」
「私も。和葉、このへん通学路じゃないのによく知ってるね」
「うん、となりのクラスの子から教えてもらった! あのね、夕方に神社前の道を歩いてると、誰かが後ろから付いてくるんだって」
神社に向かう道は、住宅街の中を突っ切るまっすぐな市道だ。昔は駅前から続く参道だったというここを通りかかると、背後から足音が聞こえることがあるらしい。
すぐに振り返っても、薄暗い道には誰もいない。隠れるような場所もない。なのに歩き始めると、再び足音が後をついてくる――
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