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「……地味に不気味で嫌だなぁ」
「でしょ? その子はまだ聞いてないけど、この辺から通ってくる子たちが何人か遭遇してるらしいよ。出くわすの怖いからって、部活とかも早めに終わらせて帰ってるみたい。
……あれ、コーチ? どしたの」
「べべべべ別に何でもねえ! 何でもないけど月島、まさかそれ検証するとか言わねえだろうな……!?」
「あっすごーい! 何で分かったの?」
「分かるわ! 約3年間どんだけお前の思い付きで引っ張りまわされたと思ってんだ!!」
鋭いツッコミを放ちつつ、いくら真冬とはいえ顔色が悪すぎる海道くんである。ああ、こういう話苦手なんだな……と心の中で同情していると、和葉は悪びれもせずに言い切った。
「えー。だってコーチ、好きな子とお近づきになりたいから相談に乗ってほしいんでしょ」
「それは今言うなあー!!」
「え、そうなの? 海道くん」
「う゛っ!? いや、その、間違ってはないけど、だな……!」
さり気なくバラされてしまい、今度はあっという間に耳まで真っ赤になった。話す機会がなくて知らないままだったのだけど、海道くんはとっても律儀で正直な性格をしているみたいだ。
そんないいひとだけに、和葉の無茶ぶりに中学校じゅう付き合わされたというのが気の毒でしょうがない。いちおうクギを刺しておこうと口を開く。
「和葉、あんまり無理言っちゃだめだよ。いくら相談料代わりっていったって、誰でも向き不向きはあるんだから」
「そうかなぁ? コーチって器用貧乏ぎみだし、やったらわりかし何でも出来ちゃうよ。
前に部活の定期演奏会で使う衣装、ひとりで作ったりしてたし」
「いや、そうじゃなくて――えっ、ホント!? それはすごいわ!」
「…………なんつーか、朝倉って素直だよな」
「ねー。そこが可愛いんだよね~」
「………………知らねぇ」
私なんて雑巾縫うのも一苦労なのに! と感動のまなざしを向けたところ、さらに赤くなって目線を反らされてしまった。どうやら照れ屋さんでもあるらしい。なんか可愛いぞ。
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