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そんなやり取りをしていたら、ふいに後ろで足音がした。全員で一斉に振り返ると、
「あれ? 海道、もう初詣に来たんだ。今年は早かったなぁ」
ホウキを持ってゆっくりと歩いてきたのは、これまた見覚えのある男子だ。海道くんより背が高くて、顔立ちも話し方ものんびりして穏やかな感じがする。明るい緑の狩衣に袴を着ていて、それがとてもよく似合っていた。同じクラスの森宮くんだ。
「朝倉さんと月島さんも一緒だったんだ。あけましておめでとうございます」
「うん、おめでとう。森宮くん家ってここの神社だったの?」
「いやあ、母さんの実家なんだ。今じいちゃんが神主やってるから、年末年始はバイトっていうか手伝いしててさ。よかったらお守り買う?」
「あっ買う買う! 学業成就をぜひ」
「だあああっちょっと黙ってろお前ら! せめてケースは隠せ!」
のほほんとしたペースについ乗せられてしまって、話が逸れまくる女子2人。見かねた海道くんがさえぎろうとしたけど、森宮くんの視線が開いたままのケースに止まる方が早かった。ややあって、ちょっと驚いた様子で瞬きをする。
……ええっと、どう説明しよう。
とっさにリアクションが取れなくて全員が固まる中、森宮くんはてくてく近寄って来て――あっさりドラゴンを抱っこしてしまった。子犬や子猫にするみたいによしよし、となでながら一言。
「かわいいなぁ。朝倉さんちの子?」
「「「「ええええええ!?!」」」」
それぞれ違った意味合いであげた悲鳴が、きれいに重なって境内にこだました。
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