外界、遠い青

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夏の路地裏、ひとりの少年が暑さに喘いでいる。彼は薄汚く、着ている服は服と言い難いようなボロキレだ。身体中から流れ出る汗が、土汚れを浮かせる。 「あ、暑すぎるよ……。水……、そうだ、公園……」 少年は壁に手をついてなんとか立ち上がると、ふらふらした足取りで公園へ向かう。 彼の名はセシル。今年で12になる彼には、家族もいなければ家もない。5歳になる年に家族に遠いこの街に捨てられ、それからは路地裏で暮らしている。 かつてはチョコレート色だった髪も、マシュマロの様に白く柔らかな頬も、今では汚れて見る影もない。 セシルは歩いて10分ほどのところにある公園につくと、木陰に隠れた。噴水の近くにあるベンチで、少年が本を読んでいる。本当はこの少年がいようが噴水の水を飲んで水浴びをしたかったが、以前普通の子供達がいる時に噴水に入ったら、石を投げつけられたことがある。それ以来セシルは、人がいない時にしか表立った行動をしてはいけないと学んだ。 ベンチの少年は声に出して本を読んでいる。セシルはその声に、耳を傾けた。 「むかしむかしあるところに、とっても貧しい木こりがいて、木こりには子供達がいました。お兄さんのチルチルと、妹のミチルです。クリスマスの前の晩、ふたりの前に魔法使いのおばあさんが現れました。「病気の娘のために、青い鳥を探しておくれ。青い鳥さえあれば、あの子は幸せになれるのだから」。チルチルとミチルはいぬやねこ、光や水の精をお供にして、青い鳥を探しにでかけます」 続きが気になったセシルは喉の渇きを忘れ、わくわくしながら少年の声に耳を澄ませる。 「ふたりは思い出の国や幸福の国、未来の国にも行きました。ですが、どこに行っても青い鳥は見つかりません。やっと見つけてつかまえても、色が変わってしまうのです」 聞いていたセシルは、小首を傾げた。 (なんで色が変わるんだろう? ふたりの手も、泥だらけだったのかな? ) セシルは汚れて黒ずんだ自分の手を見る。
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