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「たくさん歩いて疲れたふたりは、いつの間にか眠ってしまいました。やがて朝になり、ふたりは目を覚まします。するとどうでしょう、青い鳥は木こり小屋の鳥かごの中にいるではありませんか。本当の青い鳥は……」
「おーい! 」
別の少年が駆け寄ってきて、朗読は中断されてしまった。
「兄ちゃんが遊んでくれるって! 一緒に行こうよ」
「うん! 」
ふたりは笑い声と共に、公園から走り去っていった。
セシルはおずおずと出てきて、噴水に入ると、大口を開けて水をがぶ飲みした。
「ふぅ、生き返る……。さっきの続き、気になるなぁ……」
セシルは少年の声を何度も繰り返し思い出しながら、自分の身体を擦る。
噴水から出てベンチを見ると、本と小箱が置いてある。セシルは周囲を見回して誰もいないことを確認すると、ベンチに駆け寄った。本は閉じて表紙が上になるように置かれていて、そこには兄妹と青い鳥の絵が描かれている。小箱は空きっぱなしで、中にはクッキーが入っている。
美味しそうなクッキーに、セシルの喉がゴクリと鳴る。彼はもう一度周囲を見回すと、本の上に小箱を乗せ、抱えて走り去った。水で満たした腹の中が重くて苦しくても、足がもつれても、セシルは走るのをやめなかった。
セシルがようやく落ち着いたのは、路地裏の寝床についてから。寝床と言っても、ボロキレと化した服や毛布をまとめて置いてあるだけのものだ。セシルは寝床に腰掛けると、息を整える。
「はぁ……はぁ……。つ、疲れた……」
呼吸が落ち着くと、セシルは小箱のクッキーを食べながら、本をめくった。しかしセシルは文字が読めない。絵だけを楽しむ。
すべての絵を見ても、物語の結末は分からなかった。
「うーん……本当の青い鳥は、結局なんだったんだろ? なんで起きたら木こりの鳥かごの中にいたんだろ? 」
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