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後ろ手に縛られた足軽は総大将、副将の前に座らされた。
「おぬしらの国は妖術を使うと聞いておるが、まことか?」
捕虜は無言だった。
「棒で打て!」
木刀を持った家臣が、捕虜の背中を打った。
「ああ!」
捕虜は前のめりに崩れたが、同時に木刀の家臣も、もんどりうってその場に倒れた。その背中は紫色に腫れあがっていた。
「それがかまいたちか?」
捕虜は口を開いた。
「かまいたちではございませぬ」
「ならばなんじゃ?」
「術にございます」
「術だと、たわごとを申すな!」
「たわごとでは・・・」
「ええい、斬り捨てよ」
「なりませぬ!」
「何を!この期に及んで命乞いをするのか!」
「命乞いではございません。耶磨登のものを決して殺めてはなりませぬ」
「もうよい、斬れ」
木刀の家臣が、よろよろと立ち上がると、真剣を抜いた。そして、捕虜の首を一刀のもと斬り落とした。
「うわ!」
そこには、捕虜の首と斬首した家臣の首が転がっていた。
それが耶磨登の妖術師が封印を解いた呪いだった。耶磨登の血が流れるものを傷つけたものは、それと同じ傷を負う、というものだった。
黒田軍は軍議を開いた。
「もはやどうしようもあるまい。耶磨登は捨て置こう。それしかあるまい」
「それでは、上様の御威光に・・・」
「何、島津さえ従えば十分であろう。表立っては耶磨登が降伏したという体裁が整えばよい。取るに足らぬ小国じゃ」
「父上、しかし何か策はありますまいか?」
「策じゃと?呪いや祟りに策など通じぬわ」
副将と家臣は平伏し、軍議は終わった。
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