~一人の外科医~ メスを握るのをやめようと思う

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~一人の外科医~ メスを握るのをやめようと思う

 カツカツカツと、踵の高いハイヒールの音が、国立高度医療センター受付一階に響き渡っていた。  黒く長い姫ヘア、睨まれ ればその場から動くことの出来ないような鋭い猫目。潤った薄い桃色の唇。真っ白というよりは、真っ青の肌。お化けのような雰囲気を醸し出している、彼女。  四楓院夜月、東京大学医学部卒業生、外科医である。  またの名を、〔メスの悪魔〕。  世界では認められている、世界的な医師だが、日本の中では、やっかいな邪魔者医師と見られて、主として務めている病院はなく、一匹狼状態の医師である。 「なーに、あの人。ゾンビみたいだわ、人間じゃないみたいね」 「ほんと。あ、噂の一匹狼じゃない?」 「あぁ!あの、新任外科医!」   髪の短い茶髪の女医が、こそこそと話し立てながら走り去っていった。 「気持ち悪いな。なんつー顔色なんだよ」 「産婦人科か?」 「馬鹿!お前、噂知らねえのかよ。一匹狼の医師!〔メスの悪魔〕!」  髪の短い偉そうな医師が、こちらもこそこそと囁き、走り去っていった。  新たに始まる、最新医療特区・国立高度医療センターの医師と、患者との戦い。 「国立高度医療センターの医師は、声、小さいねんな」     
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