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駅前にある、さびれた商店街には夜の理髪店があるらしい。
そんな「噂」を、中学の時に聞いたきり僕は転校して、別の町へ引っ越すことになった。
成人し、久々に訪れた場所は変わっておらず、シャッターをしめたままの店が連なる商店街はしんとしていて、活気などかけらもない。
早々に中座した同窓会兼飲み会はあまり楽しくなく、当時から威張っている、腕っぷしが強いやんちゃな男子が仕切っていて、存在感の薄い奴らは小さく縮こまり、悪口や笑い話、いじりの対象にされていた。
煙草なんか高校から吸ってる、みんなやっている。
先輩の彼女を、バイクの後ろに乗せて真夜中に走ったことがある。
麻雀で勝って、その金で風俗へ行った。
後輩は俺を見かけると、万札を出して、挨拶をする。
働くなんてばからしい、俺は、人に頭を下げるなんてことは、したくない。
大学なんて、遊びだろ。生意気なんだよ。
時間が止まったまま、ガキ臭い価値観を押し付けられ、あいつがトイレに行っている間に金だけおいて、立ち去った。とてもじゃないが、聞いていられなかった。
子供ができたから結婚した、という年下の嫁を隣に座らせ「教育してやっている」なんて、目の前で叩いて、にやにやとしていた。女は黙って、涙を流していた。最低だ。
あんな奴が強いとか、俺は一番だとか、負けないとかデカい顔している。
成人式だし、少しは皆が大人になって、懐かしく思えるかなと期待していた自分は、ひどく甘い考えの持ち主だと痛感した。
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