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片目の潰れた目玉焼きの内臓破裂死体と、あまり色の付いていない焼き足りないトースト。これは二度目の苦心作である。一度目の焼死体は、遺族に別れを告げて、すでに埋葬されている。その遺族の傍らには、オレンジ・ジュースが並々とグラスを満たし、コーヒーだけがいつもの顔で居座って、いた。
「あーんっ」
フライド・エッグの死体をフォークで突き刺し、エディが椎名の口元に持ち上げた。
「……。確か、それも昨日、テレビでやっていたな?」
頭痛を堪えるように、椎名は言った。
「……? マチガ――夕食の時だけ?」
「しないっ!」
良く言えば、テレビで見たことを自分の中に取り入れ、周りの環境に適応することが出来る、ということにもなるのだろうが、テレビが実生活を忠実に再現したものでない限り、それを生活に持ち込むことは不自然極まりない。――いや、それ以前に、誰がそんなことを――テレビで見たことをそのまま再現するのが当然だ、と思うだろうか。
「ぼく……。こんなのモニターにも本にもなかったから……」
フォークを降ろして、エディは言った。
「モニター?」
「……」
「外にも出ず、そのモニターと本だけで勉強していたのか?」
椎名は、眉を寄せて問いかけた。
だが、エディは何も言わずに、黙っている。
モニターで覚えることが彼の生活の全てだったのなら、テレビも彼に取っては『マチガイ』のないものであり、取り入れるべき生活の事柄が詰め込まれた、社会への適応手段だったのかも、知れない。
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