ロングウェイ・トゥ・ホーム

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 俺はゆっくりと狙いを定め、出てきた商店街の人たちの頭を、一人一人撃ち抜いていった。何度か銃声が響き、その度に誰かの額から上が、あるいは鼻から上がもげたように吹っ飛び。商店街は、今度こそ本当に無人になった。  誰もいなくなった商店街を抜け、俺は住宅地へと入っていった。住宅地と言っても、ほんとに昔ながらの家並みが続くだけで、ここ最近建てられたような家はほとんど見当たらない。新しく道路が舗装されたような様子もなく、それはおそらく「新参者」が久しくここに来ていないことを示している。  新しい家が建てられた時に必要な道路工事の類は、一切行われていないのだろう。確かに、そこに「生活」はあるのだろうけど、「未来」は果たしてあるのかどうか。今住んでいる人が、いつまでそこに暮らし続けるのだろうか……。なぜか、そんなやるせない気持ちにさせる町並みだった。  そして俺の実家は、こんなやるせない町並みをずっと通り抜けた、最果ての地と言ってもいいところにある。それが、ここに帰ってこなかった言い訳には、決してならない事もわかってはいたけれど。  俺がそんな複雑な思いに耽っていると、商店街での騒ぎを聞きつけたのか、家の中からひっそりと、何人かの視線がこちらを伺っているのがわかった。そのまま家の中にいるのなら、俺も手出しはしない。でももし、家から出てくるのなら……! そう思った時、一人の老人が、フラフラと俺の前に現れた。  それは、騒ぎを聞きつけて出てきたわけではなく、何か反射的な行動というか、明確な目的を持ってそうしているというわけではないような気がした。それでも、仕方ない。俺の前に出てきた以上。俺は、まだ足元のおぼつかないその老人の頭に、狙いを定めた。  ずぎゃっ……!  比較的俺から近くに出てきたその老人の頭は、見事に粉砕され、勢い余って首から下の部分までが抉れていた。おそらく、もう長い年月を経て生き続けてきた老人の肉も骨も、ショットガンの衝撃に耐えられぬほどもろくなっていたのだろう。  着ていたシャツがはだけ、老人のか細い鎖骨がむき出しになり。その左右の鎖骨の間、ついさっきまで首があった部分がUの字に抉れ、そこから噴出す大量の血の中に、ちらりと白い背骨が見えた。    
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