ロングウェイ・トゥ・ホーム

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 俺は目の前で拳銃を構えたまま震えている自分の両腕から、なんとか力を抜き、大きくため息をついた。「真実……」俺は力なく道に横たわる彼女の傍に近づき、そこにしゃがみ込んだ。そして、彼女の顔にかぶさっている長い髪を、そっと払い。もう一度、その懐かしい顔を、二度と言葉を発することのない、美しい顔をじっと見つめた。  髪を払った自分の手を、少しだけ彼女の頬に当ててみる。その白い肌に、もうぬくもりはない。そう、彼女は、真実はもう死んでいるのだから。俺が今、額を撃ち抜いた、そのずっと前から死んでいたのだから・・・  この一帯に緊急事態宣言が出されて、もう半月が過ぎようとしている。原因は産業廃棄物だとか、未知の放射線だとか、ありえそうな話からSFまがいのものまで色々ウワサされたが、未だ解明されるには至ってない。住民たちが突然「生きる屍」のようになり、その被害を免れた人々を襲い始めた、その恐怖と混乱の原因が、一体なんなのか……。  付近一体は隔離され、もちろん一般人の立ち入りは禁止された。しかし、俺は自分の故郷でその事件が起きたと知り。今までずっと振り返る事をしなかった我が故郷に、帰る決心をした。それが何か、自分にとっての落とし前をつけるような気持ちだったのかもしれない。おそらくは「生きる屍」どもに食い荒らされているか、その仲間になっているであろう、一人暮らしの母親の、せめてその「最期」を見届けようと。俺は決意した。  元より、無事に生きて帰れるとは思っていない。隔離地域を見張る部隊から武器を奪い、運行の止まった電車の路線を歩き続け、故郷の駅にたどり着いた。それからは……今まで語って来た通りだ。駅員を始め、目の前に出て来た、生きる屍達を撃ち殺し。そして、俺が生涯で一番愛した女性に今、自らの手で止めをさした。後は……。俺は力なく見開いたままの真実の目をそっと閉じ、立ち上がった。お袋がまだ、そこにいるかどうかわからないが。俺が生まれ育った家を目指す。それだけだ。
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