2 事故当日

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2 事故当日

友人はぐしゃぐしゃになった。らしかった。直接は見ていない。空色の軽自動車が、正門の前でぐしゃぐしゃになっているのは見た。友人とその恋人はすでに運び出されていた。 朝八時、ひとコマ目の講義を受けに大学に降り立った我々学生は、そろって現場を目にした。野次馬は大勢いた。バスと電車がその時間くらいしか出ていないからだ。そのくらい田舎の大学だから。 ひどいな... と、私の隣で別の学部の誰かが言う。案外しっかり同情のこもった声だった。野次馬ってのはもっとなんか無慈悲なものかと思っていた。 しかし無慈悲なのはどうやら私のほうだった。 私は、学生の死亡事故があったところで休講にはならないだろう、と考えていた。だから学部棟へ歩き出した。 背後ではまだ群集がうるさいし、警察の検分も終わっていない。けども私は歩速を緩めない。 講堂に着いたが、知り合いがいなかった。私はぼうっとした。いつのまにか、ぼんやりと、死んだ(に違いない)友人について考えていた。 死んでよかった、と考えていた。
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