遡上警察

４ 事故後

「最近いきいきしてるねえ」
「近頃はつらつとしてるねえ」
「何か肌つやがよくなったねえ」

そんな言葉ばかり掛けられるようになった。

確かに私は、無気力に取り組んでいたバイトを頑張り出したし、

自堕落に携帯ばかり見ていた時間を教習所通いにあて出したし、

昼寝の時間をライトの構造の勉強に換え、

ゲーム三昧だったはずの休日は、ホームセンターでドライバーを物色する大切な日になった。

免許をとって中古車を買ったのちは、朝五時に大学へ行き、路駐して毛布をかぶり、対向車の観察に精を出した。

目当ての車を絞り込んだ。

闇に溶け込んで事故を誘発するかのような真っ黒の車。

翌朝そいつを尾行することに決めた夜、わくわくして目が冴えた。

朝五時、路端で黒を待つ。すぐ追えるよう、いつもと逆の車線。今日ばかりはエンジンをふかしたまま待機している。

サイドブレーキに置いた手がわなわな震える。