11人が本棚に入れています
本棚に追加
私は弾かれたように立ち上がった。
瞬間、ズキっと頭に痛みが走る。
こめかみを押さえながら、ぐるりを見渡す。
横目でパソコン画面を見ると、私と同じ目線で部屋が映し出されている。右、左、顔を動かすと、その通り画面は室内を映し出す。
ゴトッ。
右耳の後方から音がする。後方は玄関に通じる狭いキッチンだ。
ズルリ、ベチョッ、ズルリ
べチョッーーーー
フローリングの床を何か大きな濡れたものが這いずるような音。
振り向いた瞬間、ありえないものが見えた。
黒い長い人間? のようなものが床を這っている。
それはじりじりと移動して、私のすぐ近くに迫ってきた。もやのようなその物体が動くたびに床に血の跡が付いている。
その黒い人の影のようなものが、素早く私に長い手を伸ばしてきた。逃げようとしたが、頭を鷲掴みにされる。
「ひいっ!」
ずるずると音を立てながら、黒い塊が立ち上がり私に擦り寄る。
「うっうっうう。やめて! やめてえ!」
恐怖と痛みで思わず叫んだ。
「むおーーーーーーん」
モヤのようなその黒い人影は妙な音を発している。
「うわんうわんうわんうわんうわん」
幻聴? 頭の中に異音が響く。
最初のコメントを投稿しよう!