平成31年3月某日の話

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私は弾かれたように立ち上がった。 瞬間、ズキっと頭に痛みが走る。 こめかみを押さえながら、ぐるりを見渡す。 横目でパソコン画面を見ると、私と同じ目線で部屋が映し出されている。右、左、顔を動かすと、その通り画面は室内を映し出す。 ゴトッ。 右耳の後方から音がする。後方は玄関に通じる狭いキッチンだ。 ズルリ、ベチョッ、ズルリ べチョッーーーー フローリングの床を何か大きな濡れたものが這いずるような音。 振り向いた瞬間、ありえないものが見えた。 黒い長い人間? のようなものが床を這っている。 それはじりじりと移動して、私のすぐ近くに迫ってきた。もやのようなその物体が動くたびに床に血の跡が付いている。 その黒い人の影のようなものが、素早く私に長い手を伸ばしてきた。逃げようとしたが、頭を鷲掴みにされる。 「ひいっ!」 ずるずると音を立てながら、黒い塊が立ち上がり私に擦り寄る。 「うっうっうう。やめて! やめてえ!」 恐怖と痛みで思わず叫んだ。 「むおーーーーーーん」 モヤのようなその黒い人影は妙な音を発している。 「うわんうわんうわんうわんうわん」 幻聴? 頭の中に異音が響く。
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