平成31年3月某日の話

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「ごめんなさい、ごめんなさい! 許して! 今から自首します! あんな事故起こしといてそのまま逃げたなんて、私たちどうかしてた」 黒い人間に頭をつかまれたまま、私は泣き叫んだ。 去年の夏以来、先輩と共有しているふたりだけの秘密とは、私が運転中に人をはねてしまったことなのだ。 少しだけお酒は飲んでいた、ほんの少し。 先輩とふざけてキスしたりしてた、運転中に。 でも、まさか真夜中のあんな場所に人がいたなんて思わなかったし。 車にはねられた人が、あんなに飛んでしまうなんて知らなかったし。 山道から崖下をのぞいたけど、どこに落ちたかわからなかった……。 たしかにあの時すぐ通報すべきだった。 でも、でも先輩が反対したのが悪いのよ! 『俺の立場を考えてくれ』って。 エリートで将来の幹部候補生だし、もうすぐうまく離婚できるから、って言われたら逆らえないじゃない! 幸い目撃者もいない山中だったし。 「ごめんなさい、ごめ、ん」 つかまれた頭がもげそうなくらい痛い。 私はそのまま意識が遠のいていくのを感じる。
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