11人が本棚に入れています
本棚に追加
「ごめんなさい、ごめんなさい! 許して! 今から自首します! あんな事故起こしといてそのまま逃げたなんて、私たちどうかしてた」
黒い人間に頭をつかまれたまま、私は泣き叫んだ。
去年の夏以来、先輩と共有しているふたりだけの秘密とは、私が運転中に人をはねてしまったことなのだ。
少しだけお酒は飲んでいた、ほんの少し。
先輩とふざけてキスしたりしてた、運転中に。
でも、まさか真夜中のあんな場所に人がいたなんて思わなかったし。
車にはねられた人が、あんなに飛んでしまうなんて知らなかったし。
山道から崖下をのぞいたけど、どこに落ちたかわからなかった……。
たしかにあの時すぐ通報すべきだった。
でも、でも先輩が反対したのが悪いのよ!
『俺の立場を考えてくれ』って。
エリートで将来の幹部候補生だし、もうすぐうまく離婚できるから、って言われたら逆らえないじゃない! 幸い目撃者もいない山中だったし。
「ごめんなさい、ごめ、ん」
つかまれた頭がもげそうなくらい痛い。
私はそのまま意識が遠のいていくのを感じる。
最初のコメントを投稿しよう!