電車で見かける彼に〈短編〉

電車で見かける彼に

毎朝、同じ駅から電車に乗る彼に恋をしている。

年齢も職業も名前だって分からない。

このままきっと、眺めているだけで終わると思っていた。

「斎(さい)藤(とう)です。MRやってます。歳は28、よろしく」

会社の先輩に連れられてきた合コンで、その人はいた。

初めて聞いた声。

初めて知った、名前。

こんな偶然が嬉しくて、胸が跳ね上がる。