樹海行きのバス

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「ここは『樹海』、それはあんたの初期装備。それと、ほらこれ、これは足踏みスイッチ」 「あしぶみすいっち?」 「それからメダル」  彼女は僕の疑問に対応することをまったくせず、機械的な説明をさらに続けた。 「自分でその場足踏みしてもいいわけだけど、面倒じゃない? だからこんなものがあるわけ。『樹海』にはルールがあるけど何をしても結構だから、あとはあんたの好きにしなさい。そのメダルは捨てちゃだめよ」 「ルールって何です?」 「やってりゃわかるわ」  気づくと彼女の側に下り階段が出現していた。まるで最初からあったかのように自然で、いつからあるのか僕にはまったくわからない。 「いってらっしゃい」と彼女は言った。  そして彼女は姿を消した。立ち去ったという表現ではなく、まさに”姿を消した”。気づくといなくなっていた。  残されたのは延々と広がる草原に、僕とその階段だけである。  しばらく待ってみたが、どうしようもないらしい。  僕はその階段を下ることにした。  
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