28人が本棚に入れています
本棚に追加
/252ページ
「ここは『樹海』、それはあんたの初期装備。それと、ほらこれ、これは足踏みスイッチ」
「あしぶみすいっち?」
「それからメダル」
彼女は僕の疑問に対応することをまったくせず、機械的な説明をさらに続けた。
「自分でその場足踏みしてもいいわけだけど、面倒じゃない? だからこんなものがあるわけ。『樹海』にはルールがあるけど何をしても結構だから、あとはあんたの好きにしなさい。そのメダルは捨てちゃだめよ」
「ルールって何です?」
「やってりゃわかるわ」
気づくと彼女の側に下り階段が出現していた。まるで最初からあったかのように自然で、いつからあるのか僕にはまったくわからない。
「いってらっしゃい」と彼女は言った。
そして彼女は姿を消した。立ち去ったという表現ではなく、まさに”姿を消した”。気づくといなくなっていた。
残されたのは延々と広がる草原に、僕とその階段だけである。
しばらく待ってみたが、どうしようもないらしい。
僕はその階段を下ることにした。
最初のコメントを投稿しよう!