僕は死んだ

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 もう1体のモッツァレラとは“行動”2回分の距離にあった。僕は喜び勇んで1歩を踏み出し、モッツァレラと隣接した。あとはこいつをナマクラソードで殴るだけだ。殴れなかった。  僕が“行動”1回分の移動をした瞬間、地面から白いガスのようなものが噴き出し、それを全身に浴びた僕は体が動かせなくなったからだ!  地面にへたりこんだ僕はまったく何もできなかった。 『眠くて何もできない……。』  そんな感じだ。どうやら僕は眠くて何もできないらしい。その割に意識は鮮明で、隣接する丸いぬいぐるみのようなものが体当たりしてくる様がはっきりとわかる。 『モッツァレラの攻撃! ケイタに2ポイントのダメージ!』 『眠くて何もできない……。』  そんな感じだ。僕は依然として体を動かせず、ただ2ポイントずつダメージが積み重なるのを眺めているよりほかになかった。  レベルが上がった僕の体力は20ポイントだ。モッツァレラの攻撃に10回耐えられる。この世界がどのような鬼畜設計になっているのか知らないが、まさかそんな一方的な虐殺を認めたりはしないだろう。せいぜい3回や、長くて5回くらい行動不能となる程度が世の中の相場というものだ。  そんなことを頭に浮かべて確実に蓄積される激痛に耐えていると、通路から何かが部屋に入ってくるのが僕にはわかった。  先ほど僕がスルーした、かつて睡眠状態にあったモンスターだ。     
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