死んだ翌日

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 凝視していても仕方ないので僕は西片さんから引き継いだ内容を確認し、本日のランチメニューを把握する。カレーが残っているのでメインはこれだ。  軽く火を通したトンカツがあるため2度揚げすればカツカレーを作れる。オムレツを僕が焼けばオムカレーができる。他にもいくつかある僕にもできる簡単な料理と、飲み物だけが僕の武器だ。『マカロニ』の常連たちは寛容で、ズブの素人である僕がひとり店番をしていたところで怒ったりはしない。  むしろひとり残され働く高校生に大人たちの視線は優しい。 「お、今日はひとりか。頑張れよ」 「何なら店乗っ取っちゃえよ」  そんな声さえかけてもらえる。しかし、非常に混み合うわけではないが『マカロニ』はそれなりの集客力を持っており、大したことをしない僕でもひとりで店を回すとなると大忙しだ。開店後の来客が落ち着いた頃には気づけば数時間が経っていた。  第1波終了。僕は大きくひとつ息を吐く。  グラスにオレンジジュースを注いで一気に飲んだ。柑橘系の欲望が即座に満たされ僕は現状を把握する。第2波が訪れるまでのこの隙に、溜まりに溜まった洗い物を処理しなければならない。不思議なことに来客には流れのようなものがあり、ずっとだらだら続くというより何回かに分けて混む時間帯が発生することの方が多いのだ。     
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