死んだ翌日

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 2面使える流しの片方が洗い物で満たされていた。僕はもう片方に水を張り、洗剤を適量投与する。ゴム手袋をはめた手でぐるりとかき混ぜ、洗浄槽を完成させると、ざばざばと流水でゴミや汚れを取り除きながら洗い物をそこに沈めていった。  そうした第1の処理をすべての洗い物に施した僕は、軽く水を切るように振って古いものから順に食器洗浄機に並べていく。コツは第1の処理で縦方向に過剰に積み重ねてしまわないことだ。そして水を切る動きでつけ洗いによって浮いた汚れを取り除くのだ。  あとは食器洗浄機という文明の力に任せれば良い。すべてを平らげた機械の電源を入れ、適切なコースでスタートすると、そのうち洗い物が終わるというわけだ。  2面の流しに残った雑多なゴミや汚れを処理し、生ゴミをまとめて生ゴミ処理機に放り込む。彼らは庭の植物の肥料となる運命だ。  幸いなことに、ここまでの作業を誰にも邪魔されずに済ますことができた。僕はゴム手袋を廃棄し手を洗い、大きくひとつ息を吐く。わずかに周囲に散った水気を拭き取ると、文句のつけようのない綺麗なキッチンが復元される。  まるでそれを待っていたように、カランカランとドアが鳴り、来客を僕に知らせてくれた。  河相さんだ。常連のひとりでスラリとした美人だ。『マカロニ』で働いていて良かったと思う原因のひとつで、僕と共に西片さんのカレーを愛する同志である。     
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