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モッツァレラは“行動”1回分の距離を近づいている。それで僕に閃きが訪れた。おそらくこの“行動”ごとの距離でこの世界は構成されており、微調整が効かないようにできているのだ。マス目のようなイメージだろうか? それに地理的な条件が支配されている気がする。
思い返せばそのような予兆はこれまでにも確かにあった。僕が軽く1歩進もうとしていてもそんなことはできないし、モンスターも等しくこの距離を基準に行動している。彼らと隣接したときの位置関係も、いずれかの部屋の壁と平行なものになっていた気がする。
ルールを把握することは大切だ。僕はこの世界で距離も方角も自由にはならない。対照的に時間は十分与えられており、おそらく僕が何か“行動”を起こさないことには彼らはずっとその場に待機するのだろう。
僕はモッツァレラとの位置関係をきちんと把握し、行動軸のようなものが十分合わさるように移動し、調整を行った。
僕の考えが正しければ、この矢はあいつに届く筈だ。僕は木の矢のうち1本を握り、モッツァレラに向かって軽く放った。
『モッツァレラに12ポイントのダメージ! モッツァレラをやっつけた!』
考えた通りである。矢は僕とモッツァレラのいた直線上をまっすぐ飛び、丸々としたぬいぐるみ状のモンスターに突き立った。やっつけられたモッツァレラは光の粒子となって消え、木の矢もそこには残されていない。
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