空腹感

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 先ほど放った、壁まで飛んでいって落ちた木の矢はその場に残っているようだった。試しに近寄り手に取ると、なるほど『1本の木の矢』が手に入る。それをそのまま袋に入れると『9本の木の矢』に統合された。  なかなか面白い現象だ。僕は木の矢を壁に向かって放ち、落ちた『1本の木の矢』を今度は直接袋に入れずに『タッパー(3)』に入れてみた。すると、袋の中に『8本の木の矢』、『タッパー(2)』の中に『1本の木の矢』と分割して存在する状態になった。このタッパーの後ろの数字は残り容量を表していることがついでにわかった。  だから何だという話だが、今後何かで使える知識となるかもしれない。仮にそうはならないとしても何だかヘンテコな現象で、このわけのわからない世界で自分の仮説の通りに事が運ぶというのは不思議な快感を僕に与える。  そこで調子に乗ったのがいけなかった。  タッパーの中の木の矢は自由に出し入れ可能だったため、僕は試しにすべての枠を『1本の木の矢』で満たしてみようと思ったのだ。  それには複数の『1本の矢』を地面にばらまく必要があったため、僕は壁に向かって連続して矢を放った。どうやらひとつのマス目にはひとつのアイテムしか存在できないようにできているらしく、既に『1本の矢』が落ちている床を避けるように、少し離れて次の『1本の矢』が落ちた。僕の右隣のマス目である。     
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