空腹感

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 そこに矢が落ちた瞬間、何かのスイッチが押されたような音がした。  「なんだ!?」  何らかの装置が起動をはじめた。何かがこれから起こるというのに身動きがまったく取れない恐怖がわかるだろうか。  天井か。異変を予感して見上げると、幸か不幸か予想通りに異変が起きた。僕の見上げた天井の一部が開き、そこから大量の水が流れ落ちてきたのだ!  まさにバケツをひっくり返したような状況だった。おそらくそのスイッチが存在した場所を中心に、隣接する1マスを巻き込む形で大量の水がすべてを飲み込む。  反射的に息を止めていたため溺れたりはしなかった。上から下への流れなので鼻からの浸水に苦しみもしない。すぐに水は引き、蒸発したように水の影響を感じない。一体何の罠だったのか、そもそも罠と言えるのかと疑問に思っていると、袋のようなものの中に起きた変化に僕は気づいた。  白河さんからもらって袋のようなものに入れていた『大きな肉まん』が、『べちょべちょ肉まん』に変わっている!  説明文を読んでみてもそれは悲惨な状態であるらしい。『一応なんとか食べられます』という記載が嫌な未来しか連想させない。     
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